相続は人生において重大な出来事ですから、一人で相続に関する処理を進めるのは心もとないですよね。

そのため、日本では相続の処理に長けた専門家が存在し、一般的には書士業と呼ばれる国家資格者が相続に関する作業を行います。彼らに依頼すれば書類の作成はもちろん、公共機関への提出や処理まで行ってくれます。

書士業と耳にすると「弁護士」「司法書士」が有名ですが、相続業務に関わる書士には他にもいろいろなタイプが存在して仕事内容も異なります。今回はこういった書士の業務内容についてご紹介していきましょう。

相続に関わる職業の具体的な仕事紹介~弁護士について

最初に「弁護士」についてご紹介します。弁護士は国家資格士業の中でも最も資格難易度の高いものとして知られ、法律の専門家としての世間的な認知度の高さは言うまでもありません。

相続業務に関しても、やはり士業の中で最も関わりの大きく、現代の日本社会では業務ニーズが一番大きい職業です。

しかし、具体的に弁護士がどのように相続業務に携わるのはあまり知られていません。以下では弁護士の具体的な相続に関する業務を解説します。

相続で別の相続人とトラブルが発生している際の処理

相続における弁護士の手腕が発揮されるケースと言えば、やはり他の相続人とのトラブルが挙げられます。相続によっては遺産の額が大きくなることもあり、それまで良好だった家族間の人間関係を一気に悪化させることも考えられます。

また、現代社会で多く見られる、家族同士が疎遠で普段からコミュニケーションを取る機会が減っている傾向がトラブルをより深刻化させています。

これにより、相続人同士がそれぞれ弁護士を立てて代弁してもらうケースも見られ、相続で発生する弊害を依頼した相続人に有利になるように弁護士が処理することが多くなっているそうです。

遺産分割協議における仲介や手続き

さらに、相続においては複数の相続人によって遺産を分割するケースが多く存在します。この時に分割について話し合うのが遺産分割協議です。これは本来、決して難しいものではなく、各相続人自身で話し合うことが最も理想的です。

しかし、先ほども述べたように人間関係の悪化により、専門家の仲介がないと協議さえも進められない状況が増えています。

特に現在は故郷に住んでいない相続人も多いので、仲介人として手続きを進める弁護士の役割は重要です。

相続に関わる職業の具体的な仕事紹介~司法書士について

司法書士
しかし、弁護士に相続全般を依頼することは費用も高く、状況によってはそれが決して適切でないことも考えられます。やはりできるだけ安く処理をしたいものですから、別の方法を求める場合も考えられます。

このような状況で次の手段として考えられるのが、「司法書士」を活用した相続処理です。一般的に司法書士は弁護士の業務の一部を担う国家資格書士として知られ、資格難易度も極めて高いものの1つです。

相続におけるトラブルのない登記業務

司法書士と弁護士の最大の違いは、訴訟の代理人になれるかどうかにあります。訴訟の代理人になれない司法書士はトラブルの解決には向いていません。そのため、相続関連においてはトラブルの発生しないことが見込まれる場合に活用するのがおすすめと言えます。

一般的に司法書士は「不動産の登記業務」を担うことが多く、依頼者の代わりに書類を作成して公共機関に提出する業務が多いです。

依頼者としても通常の手続きだけで済む状況であれば、司法書士に依頼するほうが安上がりで現在でもメジャーな仕事内容です。

トラブルのない遺言書や相続放棄に関する業務

また、現状において司法書士が担うことの多い相続関連の業務の中には、「遺言書」や「相続放棄」の代理人として処理を進めるケースがあります。

これも当然トラブルのない前提での依頼内容になりますが、司法書士にピンポイントで依頼することで費用が安く処理できる可能性があります。

相続人同士の関係は悪くないけど、誰か代理人にやってもらったほうが公正に事も運ぶという時にはこの司法書士の役割が大きくなるはずです。

相続に関わる職業の具体的な仕事紹介~不動産に関する書士

相続業務において、大多数の案件は弁護士と司法書士で占められています。しかし、彼らの業務を完遂させるためには、他の国家資格士業のフォローがなければ成立しません。

特に相続は不動産を多く扱いますので、数字上の業務が数多く発生することは当然です。ここでは、この不動産の数字面について弁護士や司法書士と連携している書士タイプとその仕事内容について詳しくチェックしていきましょう。

不動産鑑定士

まず、「不動産鑑定士」について見ていきましょう。不動産鑑定士はその名の通り、「不動産の評価」を担う国家資格書士です。資格難易度はとても高く、合格率は毎年わずか数%ほどです。

相続に関する不動産鑑定士の仕事内容は、財産調査の段階で遺産の不動産の価値を見極めることが主です。もちろん、他の目的における企業団体や個人からの評価依頼にも対応していますので、相続業務はいくつかの業務の中の1つとして進めているでしょう。

相続案件自体は弁護士や司法書士に依頼されることが多いので、彼らはその下請けとして業務を受けることも多いです。

土地家屋調査士

次に、「土地家屋調査士」という国家資格書士になります。上述の不動産鑑定士と紛らわしく感じるかもしれませんが不動産鑑定士が不動産の価格評価を進めるのに対して、土地家屋調査士は不動産の調査や測量そして登記までを進めます。

司法書士として活躍されている方の中には、ダブルライセンスとして土地家屋調査士の資格を持っている方も存在しています。この2つの資格を持つことで土地の相続に関する手続きが一気に進められるメリットがあります。

相続に関わる職業の具体的な仕事紹介~事務処理に関する書士

税理士
相続人の中には、自分で進められると思われる方もいて、このような方からすると既にご紹介した専門家への依頼は費用の無駄遣いと見なすかもしれません。

そのため、極力自分で手続きを進めることを前提とするのであれば、ここで紹介する2つの書士に依頼することでよりスムーズに手続きが進められます。それぞれどのような仕事内容を持っているのかご説明しましょう。

税理士

最初は「税理士」です。税理士は国税を中心とした税務申告を専門に扱う士業で、相続も金額によって「相続税」が発生することから彼らの役割が出てきます。

かつては、相続税が発生する相続額の下限が多かったこともあって、税理士が相続関連の業務を担う案件はそこまで多くありませんでした。しかし、国の財源確保のために相続税課税のための下限額は下がる傾向にあり、それによって税理士の出番が多くなってきていると言えます。

ただ、最近では相続税の処理も1人で書類作成ができるサービスやアプリなども存在しているので、相続における税理士の業務機会が不安定になっていることも事実です。

行政書士

最後にご紹介するのは「行政書士」です。行政書士が相続での業務遂行において主に担う役割は書類作成に関する業務です。

基本的に行政書士の業務は多くの書士でも進められ、それによって国家資格としては難度の低いタイプであると認識されているのです。そのため、各士業の代理として書類作成を専門的に担うことが多くなり、相続の案件を直接行政書士に依頼するケースは決して多くありません。

ただ書類作成が重要な業務である士業全般からすれば、膨大な量の書類の準備において行政書士の存在は頼りになるでしょう。

以上、相続の手続きに関わる職業とその業務内容をご紹介しました。
ご自身の状況や相続の内容に合わせて、どこまでを依頼するか適切な判断ができるよう、業務内容と依頼内容を確認することが重要と言えます。