貸家建付地とは、所有する土地に貸家が建っている土地

賃貸アパートなどが建っている敷地の事を貸家建付地と言います。より詳しく説明をすると、亡くなった人が所有をしていた土地に建物があり、その建物を人に対して貸し付けている状態のことを貸家建付地と言います。

土地の上に建物がないのであれば、貸家建付地には分類されません。また、賃貸者に対して建物を無償で貸し付けていたとしたら、それも貸家建付地にはなりません。さらに、土地は亡くなった被相続人が所有していて、建物自体は被相続人とは別の人が所有しているという場合も、貸家建付地には該当しません。

つまり、亡くなった人がマンションの一室や一戸建てなどを所有していて、それを人に対して貸し付けている場合、その敷地部分を貸家建付地と呼ぶのです。

貸家建付地であれば一般の土地よりも評価額が低くなる

土地の相続税評価というのは相続開始日の時点で換金するとどのくらいの価格になるのか、ということを基本として評価方法が定められています。その評価額に対して税金を納めることになるのです。

例えば、使用されていない土地であったり、自己利用している土地であれば、所有者の意思さえあれば売却することはできます。
しかし第三者に賃貸をしている建物が建てられているのであれば、そう簡単にはいかず複雑になります。

というのも、建物に居住をしている貸借人には、借家権が生じているからです。そして、相続税評価をするとき、借家権をもった居住者がいる建物がある土地は評価額が下がります。これは「すぐに売れるものではないのであれば価値は下がる」ということを前提とした考え方になります。
土地の評価額が低くなれば、それだけ支払う相続税の額も下がるというわけです。

「小規模宅地等の特例」の適用でさらなる評価減が期待できる

相続税の支払いをする為に住んでいる家、土地を売らなければならない…

そのような事態を避けるために、小規模宅地等の特例と呼ばれる制度があります。
これは相続によって取得をした土地でも、条件によっては評価額を減額できるというものです。この特例が適用されると、土地の評価額が50〜80%まで減額までされます。

貸家建付地評価として評価を受けた土地というのは、第三者に対して貸し付けられていることが多く、基本的には貸付事業として使用をしている土地になります。「小規模宅地等の特例」だと、これを貸付事業用宅地として適用する場合が多いのです。

つまり、貸家建付地にすることで土地の評価額を下げた上に、「小規模宅地等の特例」により貸付事業用宅地と見なされることで、さらに大きな評価減を期待できるのです。

貸家建付地であるかどうかの評価方法について

考える男性
例えば、親族に貸している場合であっても、貸家建付地評価は可能になります。
持ち家ではあるものの、住んではおらず、親族に対して賃貸をしている物件は意外と多いものです。
というのも、貸付事業用宅地の一つとして、「小規模宅地の特例」の適用を受けるためには、貸している親族からある程度の対価を受け取っておかなければならないからです。

この対価が、つまりは賃貸料のことを指します。
世間相場くらいの賃貸料を受け取っているのかどうかが、「小規模宅地の特例」を受けるには重要になるわけです。

ただし賃貸料が安いからといって、住んでいる人に借家権が生じていないのかといえば、そうではありません。
尚、賃貸料が固定資産税相当額程度であれば「使用賃借」になりますので貸家建付地評価はできません。

貸駐車場の場合

貸駐車場を貸家建付地評価することは不可能です。
土地の上に建造物が建っていて、さらにその建造物を利用する人の借家権がある場合に限って、貸家建付地評価ができます。
どれだけ立派な駐車場でも、結局は借家権が生じないのであれば貸家建付地評価はできないわけです。

賃貸部分と居住部分が一緒になった建物の場合

建物には賃貸部分と居住部分とが一緒になっていることもあります。
例えば、二階建ての建物の場合には、一階部分が自分の住まいで二階部分は人に貸している、ということもあるでしょう。

このような場合には賃貸において貸している部分に相当するだけの床面積については、貸家建付地評価が適用可能になります。

親の土地に子どもが建物を建築し第三者に貸した場合

親が所有している土地に対して子供が建物を建築し、その子供が第三者に対して建物を貸しているなど非常に複雑なこともあります。
このような場合には、親の土地の評価というのは自用地評価になりますので、貸家建付地評価をすることはできません。

地代のやり取りがなくても貸家建付地評価ができる例外

例えば親が土地と建物を所有しており、そこで貸付事業を行っているような状態で、建物だけを子供に贈与する、ということがあります。
このように、土地の贈与などのやり取りは一切ないまま、使用賃借になった場合でも賃借人に変更等がなければ貸家建付地評価は可能です。

貸家建付地評価はできるが小規模宅地の特例にはならない場合

小規模宅地の特例

賃貸をしていても、受け取っている賃料に対価としての妥当性が認められない場合は、小規模宅地の特例を適用することができません。ここで言う対価とは、世間相場並みの賃料のことを指します。
この相場並みの賃料というのは、近隣をチェックした時に、同じぐらいの広さの部屋の賃料を平均したものと比較をした場合に著しく離れていないのであれば問題はありません。

また、相続開始時点では賃貸していたものの、相続税の申告期限までにすでに空き室になっており入居者募集もしていない場合でも、貸家建付地評価はできます。

しかし、小規模宅地の特例を適用することはできなくなってしまうのです。

賃貸住宅を建てると相続税の軽減につながる?

相続人が自宅以外の場所に土地を持っていた場合、そこがまったく手が加えられていない更地であることもあります。
その場合には、小規模宅地の特例を使用することはできませんし、相続税の計算上そのままの価格で評価されることになります。

そこで、アパートをその更地の上に建てるとします。
アパートを建てることによって、その土地は使用をする上で制限がかけられますので、自由に売買することができなくなることで、土地の評価額が下がります。さらに「小規模宅地等の特例」の適用も十分期待できます。

小規模宅地等の特例と貸家建付地の評価減というのを併用することによって、節税効果は非常に高くなります。

こういった更地の上にアパートなどを建てる場合には、一括で支払いをする必要はありません。アパートを建てるためにあえてローンを組んだり、借金をするということが相続税対策の一つとして有効なのです。

お金を借りるということは、負の相続財産として財産の額から減らすことができます。ただしそのアパートがどのくらいの収益を得ることができるのか、借りたお金を実際に返済可能なのかどうか、借りたお金に利子がどのくらいかかるのかといったことに対してもしっかりと考えておきましょう。

節税をするためにそのことばかりを考えていると、アパートは建てたものの立地条件などが決して良くなく、空室ばかりで家賃収入を得ることができない、支払う利子や税金ばかりが多い、ということにもなりかねませんので十分注意しましょう。