使用者が亡くなった場合、相続した人が名義変更する必要があります。
車の所有者だった被相続人が亡くなった時点で、法的には相続人が全員で共有するものとなります。
名義変更する際には、相続人の人数や、相続人以外に譲渡する場合など、ケースによって手続の方法が若干違ってきますので詳しく見てみましょう。
相続人が1人の場合はそのまま名義変更を行う
相続人が1人の場合は基本的に、その相続人が被相続人の権利・義務全てを承継します。自動車もその中に含まれますから、相続人の名義に変更することになります。
相続人が複数の場合は遺産分割協議を行う
車の名義人が父親(死亡・被相続人)で、妻・兄弟・姉妹など相続人が複数いた場合は、「遺産分割協議」(遺産の分け方についての話し合い)を行う必要があります。これは、自動車だけでなく被相続人の財産全てが対象になります。
自動車については、遺産分割協議において権利を承継する相続人を1人決めるか、相続人全員が法定相続分によって共同で相続するかになるでしょう。
共有名義は後々面倒なことになる可能性が
自動車の名義を共有にしてしまった場合、その後の手続き全てを名義人全員で行う必要があります。そのため、ほとんどの場合誰か1人を承継する相続人として決めます。
1人が相続する場合は「遺産分割協議書」が必要に
相続人全員で遺産分割協議を行い1人が相続することになったら、「遺産分割協議書」を作る必要があります。遺産分割協議書には、自動車の車名・形式・自動車登録番号に車台番号を記載して、どの自動車が相続対象なのかがわかるようにしなくてはいけません。
この時、自動車の価格が100万円以下である場合は、遺産分割協議書ではなく「遺産分割協議成立申立書」を提出して手続きすることになります。
この場合に必要なものは、相続対象となる自動車の権利を承継する相続人の署名・押印のみとなっているため、他の相続人の協力を必要とせず手続きが可能です。
車の種類や購入方法によっても手続方法が変わる
軽自動車だった場合は印鑑証明が不要・認印でOK
もし相続する自動車が軽自動車だった場合でも、基本的には普通自動車の場合と変わりません。
違う点は、印鑑証明書が不要なところです。認印があれば問題ありません。
ローンで購入した車は「所有権解除」か「使用者の変更」手続きが必要
ローンで購入した車だった場合は、今まで説明した名義変更とは違った手続きが必要です。
ローンで購入した車の場合、所有者はローン会社または販売会社となっていて、購入した人はあくまで「使用者」となっているはずです。その使用者が亡くなった場合、「所有権解除」か「使用者の変更」どちらかの手続きが必要となります。
所有権解除とは、ローンを完済させて名義を使用者に移すことです。これにはローンの完済が必須ですので、被相続人に財産があり、現金や預貯金があればそれを利用できるでしょう。所有権解除をすると、名義が使用者(被相続人)に移り、そこからは通常の相続による名義変更が可能になります。
しかし、すべての人がローンを完済できるとは限りません。その場合は使用者を変更する手続きをすれば、権利を承継した相続人がその車を引き続き利用できます。この場合は、残ったローンの支払をどうするのか、ローン会社と相続人全員で決める必要があります。
相続による自動車の名義変更(移転登録)で必要な申請書と書類
必要な申請書は主に2つ
移転登録申請書と自動車検査証(車検証)記入申請書が必要です。
また自動車取得税と自動車税の申告・報告が必要となりますから、登録手続きと一緒に、自動車取得税と自動車税の申告書または報告書を提出しなくてはなりません。
この場合、自動車取得税に関しては非課税となっています。
必要な書類は次の通り
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- 遺産分割協議書
自筆でもPC入力でも可。相続人全員の連名と実印の捺印が必要です。
※相続対象となっている自動車の価格が100万円以下で、協議の結果、相続する人が1人と決まっている場合は、遺産分割協議成立申立書でも手続き可能です。
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- 住民票
相続人の住民票と死亡した所有者(被相続人)の住民票除票
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- 印鑑証明書
発行後3ヶ月以内のもの
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- 戸籍謄本
被相続人(除票)及び相続人全員が確認できるもの。改製されて全員の関係が確認できない場合は、原戸籍が必要になります。
- 実印(1人が相続する場合)
- 車庫証明書(相続人と被相続人の住所が同一の場合は必要ありません)
- 委任状(手続きに来ていない相続人の分。未成年の相続人の実印は、親権者のものを押印すること。)
- 車検証(有効期限内のもの)
- 手数料納付書
手続きする場所と期間について
申請は、運輸支局又は自動車検査登録事務所で行うことができます。管轄地は、相続人の使用本拠地となる場所です。
被相続人の使用本拠地から変更になる場合は、ナンバープレートの変更も必要となります。その場合は、申請書と必要書類に加えて、手続き対象の自動車も持ち込む必要が出てきます。
また、相続による自動車の名義変更手続きには期間が定められており、相続の開始から15日以内でなければいけません。
誰も相続しない場合は買い取ってもらう
誰も相続しない。車にも乗らない。そういうケースもあるかもしれませんね。
しかし、そのまま放置していても自動車税など納税の通知は毎年届きますし、当然納税の義務も生じます。
この場合は、買取・引取業者などに引き取ってもらう方がいいでしょう。業者が買取に来てくれることが多いため便利です。
他人に譲渡したい場合は「ダブル移転」が必要
知り合いなど、相続人ではなく他人に譲渡する場合は、一旦相続権のある人(相続人の誰か)に名義を書き換えた後、改めて名義変更をする必要があります。
この場合、名義変更を続けて2回行うことになるのですが、1回で行うこともできます。それが「ダブル移転」です。
ダブル移転する時に必要な10個のもの
相続人が用意するものは次のとおりです。
- 自動車検査証記入申込書(移転登録申請書)
- 手数料納付書
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印が押されたもの)
- 戸籍謄本(除籍)(被相続人の死亡が確認できて、被相続人と相続人全員の関係が全てわかるもの)
- 印鑑登録証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 委任状(代理人申請する場合、実印を押印)
- 車検証(有効期限内のもの)
- 車庫証明書(使用する本拠地の位置が変更となる場合)
- 自動車税・自動車取得税申告書(報告書)
- 実印(本人が申請する場合)
ダブル移転であれば手続きが1回で済みますが、手数料納付書と登録手数料は2回分必要ですのでご注意下さい。
被相続人が亡くなった後はいろいろと大変な時期ではありますが、車の名義変更に関しても忘れずに手続きするようにしましょう。