内縁の妻や夫は、相続の問題が出た場合、財産分与の対象になるのでしょうか?

万が一、夫婦のどちらかが亡くなった場合、相続人の順位や遺留分はどうなるのかまとめました。

内縁関係とは

内縁関係とは籍を入れずに夫婦のように生活している場合(事実上の婚姻状態)のことを指します。
戸籍上の婚姻関係がない、つまり婚姻届を提出していなければ、夫婦と同じように生活をしていても事実婚や内縁関係として区別されてしまいます。

入籍をしている夫婦と内縁関係の妻や夫とでは財産の相続問題が出た場合、どのようになるのでしょう。

内縁関係の場合、相続権は認められない!

内縁関係の妻・夫には相続権はありません。

そのため、遺産相続を定める場合、相続に関わる法定相続人に内縁の妻や夫は一般的には含まれないのです。

一般的な法定相続人の順位と法定相続分とは

法定相続人の順位と法定相続分は次のように法律で定められています。

第一順位:子供 配偶者:1/2:子:1/2
第二順位:直系尊属 配偶者:2/3:父母・祖父母(直系尊属):1/3
第三順位:兄弟姉妹 配偶者:3/4:兄弟姉妹:1/4

配偶者は常に相続人となり、一般的に内縁関係の妻や夫は法定相続人としては含まれません。

では、どうすれば内縁の妻や夫が相続を受けることができるのでしょうか。
以下では内縁の妻や夫が不利にならないようにする5つの手立てをご紹介します。

手立て1. 特別縁故者

内縁の妻や夫は相続人にはなれませんが、被相続人が亡くなり、法定相続人が一人もいない場合に限り財産分与の請求ができます。
法定相続人が全員亡くなっている場合や全員が相続を放棄した場合などが、「法定相続人が一人もいない」場合に該当します。

この場合、特別縁故者※の申立をすることで認められます。
特別縁故者の措置をとる場合は家庭裁判所への申立をしなくてはなりません。
申立は、相続人の不存在が確定してから3ヶ月以内に必要書類を提出する必要があります。

※特別縁故者…「被相続人と生計を同じくしていた人」「被相続人の看護や介護などに努めていた人」「被相続人と親密な関係などの特別な縁故があった人」に特別縁故者の申立が認められる

手立て2. 内縁の妻に子供がいる場合

親子

内縁の妻との間に子供がいて認知していた場合、または内縁の妻の連れ子を養子縁組していた場合には相続権が生まれ、相続人として認められることになります。

法律上親子関係であれば相続権が認められるということです。

手立て3. 遺言書に遺贈が記されている場合

遺産の一部または全部を内縁の妻や夫に遺贈する内容の遺言書が作成されている場合は、内縁の妻や夫に財産の移転が認められます。
この遺贈とは、死ぬまで遺言の内容を漏らしたくない場合に有効的な手段です。

遺言書の内容を亡くなるまで隠すことができるため、内縁の妻や夫など特定の人に確実に財産を与えたい場合に活用される場合があります。
この場合、公正証書遺言を作成するとより安心です。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言は、無効になったり効力が疑われたりすることのない最も確実な遺言書です。
また、家庭裁判所で行う検認手続きが必要ないため、預貯金を引き出す手続きや不動産の名義変更もスムーズに行えることから遺産を分配するまでの手間が省けます。

遺言書に内縁の妻や夫が相続財産を受け取る内容が記されていれば相続できる要因となります。

このように被相続人が財産のすべて、または一部を贈与する意志を遺言書で表すことを「遺贈」と言います。

遺贈には2種類あることも理解しておきましょう。

与える割合を決定する「包括遺贈」

包括遺贈とは、例えば全財産の半分など、与えたい財産の割合を指定する遺贈を言います。
この場合、遺贈を受けた受遺者は亡くなる前に財産の内容が変化してマイナスになった場合、借金を受け継ぐことも考えられます。

与える財産を決定する「特定遺贈」

財産を特定し、遺贈する方法です。
特定の通帳の財産や○○の土地など指定した分を遺贈する方法のことを言います。
包括遺贈とは違いマイナス財産を受け継ぐ必要はありません。

内縁の妻や夫などにマイナスを与えたくない場合は相続の専門家を通じ、特定遺贈が使われるケースがあるようです。

これらの2つの遺贈を行う場合は相続の専門家を窓口として使うケースが多いようです。
本人の意思を尊重でき、死ぬまでに内縁の妻や夫に財産を譲ることをはっきりさせたい場合に特におすすめです。

内容を伏せることができ、遺言書のように証人などに内容を知られませんので秘密を守ることで生前のトラブルを回避できるという特徴があります。

手立て4. 生前贈与

生前贈与

生前贈与とは自分が生きているうちに財産を贈与する措置のことを言います。
遺言書があるから安心と思っていても、知らないうちに内容が撤回されてしまうと効力を発揮しません。

しかし、生前贈与は誰にでも贈与が可能であるため、内縁の妻や夫でも相続できる、重要な手立ての一つです。

生前贈与のメリット

遺言書の作成が間に合わない、または撤回されたなどのケースを防ぐために生前に財産贈与できることです。

病気や事故で遺言書の作成が間に合わない場合、内縁の妻や夫は贈与を受けられないことも考えられます。

亡くなってから効力が現れるのではなく、生きている間に確実に財産を受け取るための方法です。
相続時にトラブルの発生を回避したい場合におすすめの方法です。

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリットは贈与税がかかることです。
贈与税は土地や不動産を名義変更する場合に発生します。

そのため、節税を視野に入れ、生前贈与をする場合はどれだけの税金が課せられるのかを考慮しなければなりません。

手立て5. 死因贈与

死因贈与とは生前に「あなたに財産を贈与します」といった内容の贈与契約を交わすことです。

死因贈与の2つのメリット

1. 口約束で成立

お互いの同意で成立できるため、死因贈与の特徴は口約束だけでも成立する可能性があることです。ただし、書面などで内容を残しておかなければ認めらない場合があります。

2. 負担付死因贈与

死因贈与契約とは贈与する側、受ける側の間で合意内容契約を交わすことです。負担付死因贈与とはこの合意に加えて贈与する側が贈与を受ける側に対して何らかの義務を課すことです。
この義務によってより確実に契約が実行されるため、死因贈与よりも有効な手立てとされています。

なぜなら、財産を与える条件と亡くなるまで贈与者の生活の手助けをするなどの負担が契約通りにされているのであれば、その撤回が不利とみなされ、認められない場合があるためです。

後からのトラブルを回避するために公正証書があると、より確実性が増します。
内縁の妻や夫は通常であれば相続人には含まれないのですが、円滑に内縁の妻、夫に遺産相続を行いたい場合はまず、正しい相続の知識を身につけることです。

公正証書遺言は法律で定められた形式や、実印や立会人といった複雑な手続きが必要です。
そして何より、第三者に遺言書の内容が漏れないように作成しないと、トラブルの原因となってしまいます。

そのため内縁の妻や夫が相続を受ける上では、遺産相続に適した方法を弁護士などの専門家に相談し、準備することをおすすめします。

内縁関係の妻や夫でも相続人になるには、どの方法が良いのか解決策をしっかりと見極め生前のうちから準備を整えておくのが先決です。