相続税の申告から納税までの手続きや流れというものに、悩んでいる方も多いと思います。

では相続税の申告から納税までの流れについて、考えてみましょう。

相続手続きの一連の流れ

相続をする際、誰もがすぐに対応できるわけではないでしょう。

しかし相続手続きは、「どれだけ時間をかけても良い」というものではありません。期限が定められているのです。
以下では、相続手続きの流れについてご説明します。

1. 死亡届の提出から相続人の確定

被相続人が死亡することによって初めて行われます。
まずは「死亡診断書、死体検案書」が必要になります。

続いて「遺言書の確認」です。
死亡の手続きが一通り終了すると、遺言書の有無を確認することになります。
亡くなった人が住んでいた家をしっかりと確認してみると、遺言書などが見つかると思います。
最新の日付のものが有効になりますので、確認をしておきましょう。

細かい部分の手続きも忘れてはなりません。
遺言書を捜索する場合には、社会保険や生命保険といった保険に関するものや、年金に関する手続きもしっかり処理しなければなりません。

そして相続人の確定です。
遺言書がなかなか見つからない場合や、遺言書に財産のごく一部しか記載されていないこともあります。
その場合は、「遺産分割協議」によって決定しなければなりません。

遺言書を見つけることができずに相続放棄、限定承認もしなかった場合には、相続財産は遺産分割協議によって決められます。
これは遺産相続人全員が納得できるような内容にしなければいけません。

2. 相続財産の全てを確認

相続財産のすべてを確認する必要があります。

財産は、金融や不動産などのプラスの財産だけではありません。
借金、つまりマイナスの財産についても相続対象となってしまいます。
マイナスの財産を相続する場合には、マイナス財産は全て自分がかぶることになるので、マイナス財産に関しても十分に確認しておくようにしましょう。

あまりにもマイナスの財産が多い場合には、相続放棄や、限定承認という手続きを行うこともできます。

相続放棄とは、相続自体をすべて放棄して、何もなかったことにする手段です。
相続放棄をしたことで相続順位が変更された際、今度はその人がマイナスの財産を背負わなければなりません。

限定承認はプラスの財産範囲内においてのみ相続をします。
つまり、プラスの財産によってマイナス財産を相殺したうえで残ったものだけを受け取るのです。

3. 期限以内に相続税の申告

そしていよいよ相続税申告です。

ほとんどの方には発生しない税金ではあるのですが、相続財産が非常に多い場合には相続税を納めなければならないことになっています。

そして、その申告期限は10ヶ月以内と決められています。
相続税を納めなければならないにもかかわらず、申告をせずにいると、「無申告加算税」と呼ばれる本来の税率よりも高い税率の税金を支払わなければならなくなります。

そのようなことになってしまえば本末転倒ですので、決められた金額分の税金は必ず支払いをしなければなりません。

申告が必要な場合とそうでない場合がある

相続税の申告

相続税の申告が必要なのかどうかを判断する基準となるのは、「相続税がかかるか」が関係してきます。

課税価格が基礎控除額以内に収まっている場合は申告が不要

相続税の基礎控除額がどのくらいになるのかを計算した上で、財産の課税価格が金額の中に収まるくらいの額であれば、相続税の申告をしなくても何も問題はありません。相続税に関する手続きなどは一切せずとも良いのです。そのため、相続財産の課税額を正確に計算することが第一です。

「相続を体験した事はあるけどこれまでに相続税申告をしたことはない」という人もいますが、そのような人は基礎控除額の範囲内に収まっていますので、申告漏れをしてしまっている、というわけではありません。

課税価格が基礎控除額を超えた場合は申告が必要

明確になっている本来の相続財産に対し、財産や死亡保険金といったものをプラスして、葬式費用や債務などマイナスすべきものを差し引いた後の金額のことを「課税価格」と言います。
課税価格が基礎控除額を超える財産を相続するような場合には、超える部分に相続税の課税が行われます。そのため、相続税申告をしなければなりません。

そして相続税が一切かからない場合、申告が不要になると思われるかもしれませんが、相続税が0円だとしても申告不要になるわけではありません。

配偶者でも申告をしなければならない

申告

配偶者が財産を相続する際に、「配偶者の税額軽減」という特例があります。
法定相続分の一定金額までは相続税はかかりません。一般的な家庭において、配偶者がよほど高額な財産を相続しなければ相続税が課税されることもありません。

しかし配偶者の税額軽減特例を受けるための条件として、相続税の申告をしなければなりません。
税務署に「配偶者の税額軽減を適用したい」ということを申告しなければ適用されないのです。

「配偶者であれば、配偶者の税額軽減適用になるので税金は一切かからない、つまり申告などしなくても良いのではないか」と思われるかもしれません。

しかし、実はそうとも限らないのです。

小規模宅地等の特例などにおいては申告を行った上で、評価額から減額を受けられますが、特例が適用され相続税が免除で必要ないという場合だとしても、申告をしなければなりません。

相続税申告をしないままでいると、申告期限が過ぎてから申告漏れを指摘される可能性が高いので気をつけましょう。

登記を変更しなければ土地の売却や活用ができなくなる

「相続登記」は、土地の名義を元の持ち主から相続した人の名前に変更することをいいます。
絶対にしなければならないのかといえば実はそうではないのですが、登記を変更していなければ、土地を相続したとしても売却できない、活用することもできない、ということになってしまいます。

相続した土地の名義変更、相続登記の手続きといったものを1人で行うのは、なかなか難しいですが不可能ではありません。

また、財産を相続した場合の金額が3600万円以上と高額であれば、相続税を申告しなければならなくなります。
相続税の計算を行った時に税額軽減制度を利用したことで、税金がかからなくなったという場合でも申告は絶対に必要になります。

代理で確定申告をする「準確定申告」

土地の有効活用でマンションの駐車場経営などを行っている場合には、確定申告をしましょう。

この確定申告の期間よりも前に所有者が死亡してしまった場合には、代わりに誰かが確定申告をしなければならなくなります。それを準確定申告と言います。

相続税は、決められたルールに則って申告・納税をしなければいけません。一歩間違えれば、より多くの税金を支払うことになる可能性もあります。

いつどんな時に自分が相続人になるかわからないからこそ、今のうちに相続税の申告や納税のことをしっかりと知っておきましょう。