遺産として遺された美術品や骨董品は、価値があるかないかで対処の仕方が大きく変わってきます。
価値がない場合は家財として扱えば良いのですが、価値があれば相続税などの問題が出てきてしまいます。
詳しく見ていきましょう。
美術品や骨董品に価値がない場合の対処方法
相続税はかからない場合がほとんど
遺産として美術品や骨董品を相続した場合は、相続税がかかるかどうかが気になるところですよね。
美術品や骨董品といったものはお金に換えることもできるため、相続する場合は、相続税がかかることになってきます。しかし美術品や骨董品といっても、換金できるほどの価値があるものは実際には多いとは言えません。
そもそも相続税には、基礎控除額というものが設けられていて、これは3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)で求められます。
最低でも3,600万円の相続財産がない限り、相続税は支払わなくて良いことになりますね。それほどの価値がある美術品や骨董品はそう多くありませんから、大抵の場合、相続税を支払う必要はないでしょう。
安い美術品や骨董品は家財扱いにできる
遺された美術品や骨董品がせいぜい数十万円程度の場合は、テレビや冷蔵庫といった家電製品と同じく「家財」として扱うことができます。
「家財」は相続財産ではありませんから、自由に分配できる他、相続税の対象にもなりません。
価値がなく不要な美術品や骨董品を処分したい場合は?
廃棄処分してしまう
遺された美術品に価値がなく思い入れもない場合、小さなものならば燃えるゴミとして、大きな絵画等ならば粗大ゴミとして処分する人が多いです。
また、美術品の中に大きなものが多い場合は、粗大ゴミとしての処分にお金がかかってしまいますよね。そういった場合は、不要品回収業者を利用した方が安上がりになることが多いようです。
誰かに譲ってしまう
価値はないけれど、故人が大切にしていたものを廃棄するのが忍びない場合は、誰かに譲ってしまう方法もあります。親戚や友人、故人の趣味仲間などに譲ると良いでしょう。
また、ネットのオークションやフリーマーケットを利用して譲ってしまえば、有効活用してもらえるケースも多いようです。
骨董品や美術品の価値が高い場合
価値が高い場合は相続財産として扱われる
遺された骨董品や美術品に価値がある場合は、資産的な価値が発生するため、相続財産として扱われます。美術品や骨董品の評価によってはかなりの相続税がかけられてしまいます。
美術品の評価はあくまで現在の価値
美術品や骨董品を相続する場合は、不動産と同じように価値がどれくらいあるかによって税額が決められます。この税額は、相続する美術品や骨董品が現在どれくらいの価格で販売されているかで決定されます。
遺された美術品が現在200万円の価格で売買されていれば、200万円の財産を相続したこととなり、この金額で支払うべき相続税を計算します。購入した時は安かったものでも、現在の価値が上がっていれば、現在の価格に合わせて相続税を支払わなくてはなりません。
たとえば、購入時は50万円だったのに、今は500万円の価値がある時は、50万円で買ったものを相続するのに対して500万円分の相続税を支払わなくてはならないのです。
価値を知るためには鑑定は絶対に必要!
美術品や骨董品の評価は現在やり取りされている価格で決定しますが、普通の人ならば美術品の相場などは分かりませんよね?
そのため、価値ある美術品や骨董品が遺されていた場合は、専門の鑑定士に依頼して価値を決定してもらわなくてはなりません。
鑑定は全ジャンルを見てくれるところへ依頼する
鑑定を依頼する場合は、幅広いジャンルの鑑定を請け負っているところへお願いするのが良いでしょう。
鑑定士にも専門分野があり、狭いジャンルしか対応していないところへ鑑定を依頼すると「専門外だから一部のものは価値が分からなかった」と言われてしまうことがあります。
そうなると、今度は価値の分からなかったものの鑑定を別の所に依頼しなくてはならなくなり、手間がかかってしまいます。
そのため、鑑定はなるべく幅広いジャンルの鑑定ができるところへ依頼するのが無難です。
鑑定費用が高額になるケースも
遺された美術品を鑑定してもらう時に気をつけたいのが鑑定費用です。
美術品等の鑑定には、一点あたり数万円することがあります。その結果、鑑定費用がかなり高額になってしまって、相続した財産よりもお金がかかってしまった、なんてことも。
しかも、相続のために鑑定をしているというのに、鑑定費用は相続の必要経費と見なしてはもらえず、控除の対象とはなりません。鑑定費用にどのくらいかかるのかも気をつけて、鑑定を依頼しましょう。
もし高価な美術品の相続税申告を怠ってしまったら
税務署は美術品の所在調査をしている
高価な美術品が遺されていた場合、相続税や鑑定が面倒なので、申告をせずに隠すことを考える方も中にはいるでしょう。
しかし、大抵の場合は税務署に知られて追求されることになります。美術品や骨董品の販売先では、誰が購入し所持しているのかを税務署に申告しています。
安い美術品や骨董品の場合は、税務署は追求してきませんが、高価な美術品や骨董品の場合、相続の申告を迫られることがあります。
税務署に追求されたらどうなる?
税務署から相続の申告を行うように指示された場合、大抵の場合は、鑑定をして評価額を記載した書類提出を求められます。
具体的にいくら申告をすれば良いのかを税務署側から指示されることはありません。税務署の職員も美術品や骨董品の価値を把握していませんし。鑑定することもできません。
そのため、美術品や骨董品の所持者に申告すべき額を調査するように言われるのです。
高価な美術品や骨董品が不要な場合の処理方法
売却してお金として相続する
相続した美術品や骨董品が不要なものならば、売却してしまうという手段を選択することができます。売却した費用を相続税として納付したり、お金として相続したりすることもできます。
ただし、売却した際にその値段が購入価格よりも高値だった場合は譲渡所得となり、所得税を支払わなければならなくなるため注意が必要です。
美術館などに寄贈してしまう
遺された美術品や骨董品が不要なものならば、美術館や博物館に寄贈してしまえば相続税を支払わなくて良いことになります。
ただし、寄付をするならば相続税の申告をする前にしなくてはなりません。相続税の申告後に寄付をした場合、自分が相続したものを寄付したということになってしまい、相続税を払う必要が出てきます。
美術品や骨董品は、価値のないものならば相続税について特に気にする必要はありません。しかし、価値のあるものに対しては相続税をきちんと支払う必要があります。
いずれにせよ、故人が大切にしていたものだということを意識して、最善の対処をしたいものですね。