基本的に死亡保険金に相続税がかかることはありませんが、死亡保険金にも相続税がかかってしまうことがあります。
死亡保険金には非課税枠があり、その非課税枠を超えた金額が基礎控除額よりも大きければ、相続税がかかってしまうのです。相続する人が何人かによって、非課税枠などの金額は変わり、故人との関係によっても相続税がかかるかは変わってきます。
以下で詳しく確認していきましょう。
死亡保険金に相続税がかかるケースって?
保険料負担者が被保険者だと相続税がかかる
保険料を負担していた人が被保険者だった場合、死亡保険金は相続税の対象となります。しかし、死亡保険は遺された家族の生活を少しでも保障するためにある保険金です。そのため、死亡保険金は一定額までは非課税となります。
死亡保険金の非課税枠の計算方法
死亡保険金の非課税となる金額は、法定相続人の人数で異なります。法定相続人とは、配偶者、子ども、孫、ひ孫、父母、兄弟姉妹といった方のことです。
相続人が保険金を受け取る場合に限って、
500万円×法定相続人の人数
の分だけが非課税金額となります。
たとえば、法定相続人が4人いた場合は500万円×4=2,000万円が非課税金額となります。この時、法定相続人4人のうち、2人が相続放棄をしても500万円×2=1,000万円とはなりません。
相続放棄をした人も法定相続人としてカウントして非課税金額を決めます。
基礎控除の範囲を超えると相続税がかかる
法定相続人の人数により非課税額を決めました。では、この額を超えてしまうと税金がかかるのかというと、そうではありません。
この額を越えていても、相続する財産の金額から「債務控除」を差し引いた金額が「基礎控除」の範囲内なら、税金を取られることはありません。
基礎控除は、
3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
で求めることができます。
基礎控除を計算する上でも、法定相続人は相続を放棄した人も数えるようにしてください。この基礎控除よりも、相続財産から債務控除を差し引いた金額の方が少ない場合は、相続税はゼロになります。
債務控除とは、披相続人が残した借入金といった債務、もしくはお葬式費用のことです。
これらをまとめると、
基礎控除額<相続財産-(債務控除額+保険の非課税金額)
のケースでは、死亡保険金に相続税を支払わなくてはならない、ということになります。
配偶者の税額軽減制度に注意!
配偶者は法定相続分までなら無税
配偶者には、税額軽減という優遇規定が適用されます。配偶者は法定相続分までであれば、相続税を納めなくても良いと決められています。
配偶者の法定相続分は遺産全体の2分の1ですから、遺産全体の2分の1以上の財産を相続しない限り、納税は不要ということになります。
仮に遺産総額が10億円であっても、5億円までは相続税を支払わなくて良いのです。
配偶者は1億6千万円までは無税
そもそも遺された遺産が少ない場合は、法定相続分も少なくなってしまいます。これでは低所得者が不公平になってしまうため、この公平さをなくすために、法定相続分を超えた相続をしてしまっても配偶者が無税となることがあります。
配偶者は、相続した金額が1億6千万円を下回っている場合、相続税を払う必要はありません。つまり、死亡保険金が基礎控除額を越えていても、配偶者は相続税を支払わずに済むことが多いのです。
配偶者でも申告を忘れると相続税を払うことになる
配偶者の税額軽減の適用を受けた結果、税額がゼロになったとしましょう。しかし、その際でもきちんと申告をしなかった場合は、相続税を支払わなくてはなりません。
相続税額がゼロの場合は、原則として相続税の申告手続きは不要です。
しかし、配偶者の税額軽減の適用を受けた結果として相続税がゼロになった場合は、相続税をゼロとして相続税の申告をしなくてはならないのです。
これを怠ると、本来は支払わなくても良かった死亡保険金の相続税を支払うことになるケースがあるようです。また、遺産分割協議が途中だった時もこの特例は利用できず、相続税を支払うことになります。
複数人で死亡保険金を受け取った時に相続税がかかるケース
これまで見てきたものは、死亡保険金を受け取るのが一人だった場合のケースです。
死亡保険金を複数人で取得した場合はどうなるのかを見ていきましょう。
相続人ごとに非課税の枠を使うことはできない
死亡保険金を複数人で取得した場合、誤解されやすいことがあります。それは、保険金を取得した相続人ごとに非課税枠が使えるのではないかということです。しかし実際はそうではなく、保険金を取得した相続人全員で非課税枠が超えないかを考える必要があります。
非課税枠の計算は
非課税限度額×相続人が受け取る死亡保険金の額÷すべての相続人が受け取った死亡保険金の合計額
で計算できます。
計算式を見ただけでは分かりにくいので、一例をあげましょう。
5,000万円の死亡保険金を3人の法定相続人で
A 3,000万円
B 1,000万円
C 1,000万円
と分けたとします。まず非課税限度額は、
500万円×3人=1,500万円
となります。非課税枠を3人で分けるわけですから、
A 1,500万円×3,000万円÷5,000万円=900万円
B・C 1,500万円×1,000万円÷5,000万円=300万円
これらがそれぞれの非課税枠になります。
Aは2,100万円分、B・Cは700万円分の死亡保険金に税金がかかることになるのです。
相続人以外の人も交えて死亡保険金を受け取った場合は?
死亡保険金を受け取る方の中に、相続人でない方が加わることもあるでしょう。この時に押さえておきたいことは、相続人以外の人が死亡保険金を受け取った場合、そもそも非課税枠を使うことができないということです。
ですから、仮に5,000万円の生命保険金が遺されて、相続人であるA・Bと、相続人ではないCの3人が、
A 3,000万円
B 1,000万円
C(相続人ではない) 1,000万円
を受け取ったとしましょう。非課税枠は相続人にしか適用されませんから、非課税限度額は、
500万円×2人=1,000万円
になります。
そして、この非課税枠が利用できるのは、AとBだけです。ですから、それぞれの非課税枠は、
A 1,000万円×3,000万円÷4,000万円=750万円
B 1,000万円×1,000万円÷4,000万円=250万円
C なし
となります。
ですから、Aは2,250万円分、Bは750万円分、Cは1,000万円分、それぞれ税金がかかることになります。
ただし、相続税を申告しなくてはならないのは基礎控除(3,000万円+(600万円×法定相続人の人数))以上だった時です。上記の場合は、基礎控除額は法定相続人が2人ですから、4,200万円となります。つまり、
A(2,250万円)+B(750万円)+C(1,000万円)=4,000万円
となり、基礎控除額を越えていないため相続税はかかりません。
この計算方法で基礎控除額を超えた場合に支払う必要が出てくるのです。
死亡保険金は遺された家族のためのお金です。非課税枠を越えていて、さらに基礎控除額よりも大きい金額の場合でないと相続税はかかりません。
また、相続する人が配偶者か、相続人ではないのかによっても相続税がかかるかどうかは変わってきます。今回解説したことに気をつけて、正しく相続税を計算しましょう。