「相続税の連帯納付義務」という制度があります。これをきちんと理解しておかないと、「自分の相続税は支払ったのに、なぜ他人の相続税まで支払わないといけないの?」という、大変な思いをすることに。

そこで今回は、相続税の連帯納付義務について解説していきます。
しっかりと理解して、相続税を支払ったにもかかわらず思わぬタイミングで税務署から支払い命令がきた、なんてことにならないようにしましょう。

連帯納付義務は相続人の誰かが相続税を滞納した場合に発生する

一人の被相続人から複数の人が相続を受けた場合、自分は相続税を支払ったから安心、というわけではありません。
被相続人の財産を相続した相続人の中で、相続税を支払っていない人がいた場合、滞納分の相続税を連帯納付しなければならないという義務があるためです。

連帯納付義務は相続人全員に発生する

連帯納付義務は、被相続人から相続を受けた全ての相続人に対して発生します。
基本的には、滞納者以外の相続人全員に対して均等に連帯納付の義務が発生しますが、前もって特約を設定していた場合や事業などを承継した相続人がいる場合はその限りではありません。
また、連帯納付すべき分の相続税については延納が認められていないため注意が必要です。

連帯納付義務による相続税額の限度は自分が相続した財産で決まる

連帯納付義務で負わなければならない相続税額は、連帯納付義務を負った相続人が受けた相続の価額までと限度額が定められています。それ以上の納付義務が発生することはありません。

連帯納付には利子税がかかる

連帯納付義務を履行する場合にかかる税金は平成23年4月1日の改正により、延滞税から利子税に変更されました。この利子税を合わせた金額を相続税として納付しなければなりません。
また、納付通知書が発せられた日から2か月以内に納付されなかった場合、強制換価手続により、差し押さえなどの処分を受ける可能性があります。
そうならないためにも、相続を受けた場合は自分の相続税だけではなく、相続を一緒に受けた相続人同士で納税を行うように促し、きちんと期日内に相続税を支払ったかを確認しあいましょう。

連帯納付義務発生までの詳細な流れ

まず納税期日までに税金を支払わなかった、本来支払うべき納税者に税務署長から督促状が届きます。
督促状が発せられた日から換算し、1か月以内に完納されない場合、まもなく連帯納付義務者にその旨の通知がされます。

このタイミングではじめて、他の相続人が滞納していることを知るケースがほとんどのようですね。

本来の納税者に督促状が届いてから2か月を通過しても完納されないとはじめて連帯納税義務者に督促がされます。
こうなると、督促状が発せられた日から換算して、10日以内に完納しなければなりません。

完納が確認できなかった場合は、連帯納付義務者の財産の差し押さえや動産の売却などの措置が取られ、思わぬ滞納処分に追われることになる場合があるのです。

連帯納付義務が解除される条件は2つ

相続

申告期限から5年が経過している

国税の徴収権は5年で消滅するため、相続税の納付義務も5年が時効となります。連帯納付義務も同様に5年で時効となるため、5年間何らかの方法で納付を免れれば、相続税の納付義務は消滅します。ただし、期限後申告や修正申告などがあった場合には、これらがあった日から数えて5年が時効となります。

延納、納税猶予の適用

本来の納税義務者が、担保を提供して延納や納税猶予の適用手続きをした場合も、連帯納付義務は消滅します。

延納申請とは相続税額の合計が10万円以上で納付が困難である場合にできる手続きです。延納税額が100万円以上の場合は担保を提供しなければなりません。

対処法までしっかり理解して覚えておくことが大事

相続税の連帯納付義務は、その内容や5年の時効期限についてもあまり知られていないのが現状です。
相続の可能性がある方で相続人が複数いる場合、相続にまつわる細かな情報や納税の仕組みを理解しておくことで納税者の立場になった時点で戸惑うことは少なくなるでしょう。

そもそも連帯納付義務の意義って?

国税局
そもそも、なぜこのような制度があるのかと言うと、税収の漏れを防ぐためです。国からすると、連帯納税義務は重要な役割を持っていると言えるわけですね。

しかし実際には問題点も多く、過去に幾度となく連帯納付義務に対する不服申し立ての事案が発生しています。これを緩和するため、上述のような解除要件が設定されたのです。

緩和されたとは言え、連帯納付義務は今でも義務として確かに存在しています。当事者にならないためにも、前もって相続人同士でしっかりと確認しておく必要があるでしょう。

連帯納付義務で他人の税金を支払うことにならないために

連帯納付義務で他の相続人の分まで相続税を支払うことがないようにするには、自分だけが相続税を支払ったからと安心せずに自分以外の相続人がきちんと相続税を支払ったのか気を配り、連絡を取り合うことです。

あるいは、代表者を決めて全ての相続人の納付書をまとめて持参のうえ、銀行で納税の手続きを代行するというのも「不意打ち」を避けるためには有効と言えます。

連帯納付義務には十分注意し、トラブルにならないようにしましょう。