家庭環境が複雑になっている今の時代。相続に関しても大きく影響を及ぼすことも多く、相続の金額が各相続人の関係悪化を来すケースもあるほどです。
特に相続は血縁者だけとは限らず、第三者がその対象になる場合もあります。そのため、相続では「遺留分減殺請求」という制度が存在し、相続額のバランスを考慮しています。
意外に知られていない「遺留分減殺請求」とはどんなもの?
相続そのものに対する関心の薄い日本では、「遺留分減殺請求」と呼ばれる制度をご存知の方は非常に少ないです。
相続で大きい金額が動くことも多いため、様々なトラブルに発展することも少なくありません。
ここでは、「遺留分減殺請求」がどのように役立ってくれるのか、基本を見ていきましょう。
不利になりやすい法定相続人の取り分を最低金額保証する制度
遺言書の内容は強い決定力を持ちます。そのため、時として死亡者と関係の深かった第三者への遺産配分が発生することも。
法定相続人からすると不公平感も否めず、金額によっては法定相続人の取り分が著しく減る場合もあるでしょう。
この場合「遺留分減殺請求」制度により、一定割合にて法定相続人の取り分を最低分だけ遺留できるのです。
遺留分減殺請求が認められるのはすべての法定相続人ではない
「遺留分減殺請求」は確かに法定相続人のためではあるのですが、決してすべての方に認められている訳ではありません。
いわゆる法定相続人の中でも、死亡者から見て1親等当たる配偶者/子供/両親にしか認められず、死亡者の兄弟姉妹には認められてません。
この点には注意が必要です。
遺留分減殺請求にて認められる遺留分の一般的な計算方法
さて、多くの方が注目しているのが遺留分の減殺請求によって「遺留分」がどれほど確保できるものなのか、という点でしょう。
一般的に「遺留分」の計算方法については、相続する法定相続人の身分によって率が定められています。ここでは、どのような身分分けによって計算されるのかを見ていきましょう。
直系尊属が相続人であるか否かによって遺留率が異なる
「遺留分」の決定については、尊属つまり死亡者の両親だけが法定相続人である場合と、そうでない場合で分かれます。
両親だけが法定相続人である場合は、通常の法定相続分の3分の1が遺留されます。
それ以外の法定相続人、つまり配偶者や子供が法定相続人の場合は、法定相続分の2分の1が遺留される仕組みとなっています。
このように、法定相続人が専属であるか否かによって、遺留分が大きく異なることが分かります。
遺留分減殺請求の手続き方法には2種類ある
次に「遺留分減殺請求」の手続きについて解説します。
現在、一般的には2つの方向性によって手続きを進めることになっています。
一般的な遺留分減殺請求の場合
まず1つは、自分たち以外の相続人に対して直接「遺留分減殺請求」を進める方式になります。
もともと、必ずしも「法的な手段によって請求をしなければならない」という決まりもなく、むしろ当事者同士で解決できるのであれば一番理想的と言えるでしょう。
この場合は、書留郵便などで請求書を相手方当事者に送付することで意思表示ができます。
裁判によって進める遺留分減殺請求
このような当事者間での請求を行っても、相手側が積極的に対応してくれない場合もあります。
この場合は家庭裁判所での「遺留分減殺調停」を進めることが可能です。裁判所で協議の機会を持つことができるでしょう。
仮にこれでも請求が困難な場合は、最終的に民事の訴訟という形で、地方若しくは簡易裁判所に判断を仰ぐことができます。
遺留分減殺請求を進める上で注意しておくべきポイント
最後に、「遺留分減殺請求」を進めるに当たって、限られた時間内に結果を出すために注意しておきたいポイントをご紹介します。
いきなり裁判によって遺留分減殺請求を進めることはできない
先にも述べた「遺留分減殺請求」の訴訟による方法ですが、いきなり裁判に持ち込むことはできません。
調停での事前処理が絶対的に求められます。
これは「調停前置主義」と呼ばれ、当事者間で自主的に解決できないからと言って、いきなり訴訟に持ち込むことができないシステムになっています。
遺留分減殺請求には消滅時効がある!
さらに、「遺留分減殺請求」で最も意識しなければならないのが、請求できる権利には消滅時効が存在する点です。
これを過ぎれば、たとえ法定相続人という立場であっても「遺留分」の主張ができなくなりますので注意が必要です。
相続の手続きに入った段階で、この点を強く意識して進めていきましょう。