何らかの財産に対して相続を進める場合、相続人には相続税の支払い義務が発生ます。
しかし、例えば不動産のように、相続する財産が預貯金とは限りません。
すぐに現金化できなければ、相続税の支払いに苦しむ相続人も出てきます。
「少しでも安くしたい…」、そう考える人がいるのは自然なことだと言えるでしょう。
ここでは、相続税をできるだけ安く抑えるための各種控除について説明していきます。
基本的な相続税の控除
基礎控除とは?
相続における最も基本的な控除が、基礎控除です。
とはいえ、現行制度では相続の多くを占める1,000万円以下の基礎控除は存在しません。
相続額が1,000万円を超えると、段階的に控除が適用され、控除額は相続する金額によって異なります。
50万円から始まり、相続額が6億円を超えると、上限である7,200万円が控除されます。
配偶者における控除
配偶者には、相続税の控除に関して大きな優遇処置がとられています。
配偶者は法定相続人の中で取り分が最も大きいだけでなく、相続する財産が1億6千万円までは非課税となります。
日本において1億円を超える相続は少ないため、配偶者の多くが相続税の支払いもゼロになるはずです。
相続人の身分による控除
相続人の身分によっては、相続税の控除が進められる場合もあります。
特に生活の糧が安定していない人の場合は、優遇処理がなされます。
ここでは、未成年者と障害者における控除について説明していきます。
未成年者における控除
未成年者の相続税における税額控除は、未成年者が20歳になるまで何年間あるかを考慮して進められます。
未成年者であっても、相続税における税率そのものは通常の成年相続人と変わりません。
ただし、1年当たり10万円が、年数に乗じて税額から差し引かれます。
16歳で相続した場合、20歳まで4年間あるので、10万円×4年=40万円が控除されます。
障害者における控除
障害者の相続税に関する税額控除は、先述の未成年の控除よりもさらに優遇されています。
障害者の場合、相続時の年齢から満85歳までの年数差を考慮され、1年当たり10万円(特別障害者は20万円)が年数に乗じて控除されます。
相続税で認められているその他の控除
相続税の税額控除の中には、あまり一般的ではない特殊な控除もあります。
相次相続による税額控除
相次相続とは、相次いで相続を起きることを言います。
被相続人の財産を相続してから10年以内に、また別の被相続人が死亡し、同じ人が財産を相続するケースです。
この場合、1回目の相続時に相続税を支払っていることになるので、1年当たり支払い済み税額の10%を、2回目の相続税から差し引くことができます。
外国財産相続による税額控除
外国の財産になると、その該当国家にて日本の相続税に相当する税金が既に課されていることがあります。
この場合、相続税の2重課税になる可能性もあるため、海外で支払った金額から日本における控除額を算出することになります。
贈与税の控除
日本では相続と類似している権利移動概念として、「贈与」と呼ばれるものがあります。
贈与には、相続税ではなく「贈与税」が課されます。
相続と贈与の最大の違いは、故人の財産分与が生前に行われたのか、死後に行われたのかという点です。
一般的に、贈与税は相続税よりも高額ですが、条件次第では控除を受けることができます。
贈与後3年以内の贈与税に関する控除
元所有者からの贈与時に負担した金額に関して、贈与から3年以内に元所有者が死亡した場合、支払った贈与税を相続税の控除額として計算することが可能です。
贈与税率は200万円以下の財産でも10%税率が掛けられるので、この分を相続税で控除できることは相当意義が大きいと言えるでしょう。
このように、条件が揃えば相続税も控除を受けられる可能性があるのです。