相続税を支払うときに、現金でそのまま相続をした場合と、同額の不動産を購入してから相続した場合では、不動産の方が安い相続税で済みます。
それはなぜでしょうか?

現金で相続税を支払うケースと不動産で支払うケースを、実際に計算し比較してみましょう。

遺産を現金で相続するか?不動産で相続するか?

遺産相続では、財産を現金でそのまま相続する以外に、不動産を購入してから相続するという方法があります。
そのまま現金で相続すれば余計な手間もかからないのに、なぜわざわざ不動産を購入するのでしょうか?

その理由は、現金と同額の不動産を購入してから相続をすることで、その不動産の評価額が購入時の80%まで下がるからです。
相続税はこの評価額を元に計算されます。

つまり、現金でそのまま相続した場合に比べて、不動産を購入してから相続した方が相続税が安くなるのです。

遺産を現金で相続した場合の計算方法

故人の財産を相続するときに、現金で相続した場合、どのくらいの相続税がかかるのでしょうか?
基本の控除額というものがあり、まず基礎控除額として3000万円。これに相続人1人当たり600万円の控除が加算されます。
相続金額からこの控除額を差し引いた残りの金額に対して、相続税がかかります。

また、現金の場合は、相続する金額によって税率も変わってきます。
1000万円以下の場合は10%、1000万円超から3000万円以下の場合は15%、3000万円超から5000万円以下の場合は20%、5000万円超から1億円以下の場合は30%、1億円超から2億円以下の場合は35%となります。

それ以降は5%ずつ税率が上がって行き、最高55%まで相続税として徴収されます。
現金で相続をする場合は、相続する金額に合わせてこの税率計算がなされるわけです。

遺産を不動産で相続した場合の計算方法

不動産の相続税

遺産を不動産で相続する場合は、どのような仕組みで相続税が決められるのでしょうか?
土地や建物といった不動産を相続するには、まずその不動産にどれくらいの価値があるのかを見極める必要があります。

そうするために、不動産の価値を現金化したものを評価額といいます。
通常、不動産の評価額を決める場合、路線価方式か倍率方式のどちらかで行われます。
そこで算出された金額の80%程度が、実質の評価額となります。

土地には、路線価がつけられている地域と、つけられていない地域があり、路線価がつけられていない地域では、倍率方式で評価額が決定します。

建物に関してだと、既にある建物の場合は、建築費用の50%から60%が通常の評価額となります。
ただし、故人が住んでいた家の場合や、相続人に同居人がいた場合は、評価額は通常の20%で計算されます。

例えば、通常の評価額だと2000万円の価値がある建物の場合、相続人が同居していると、評価額はその20%となります。

つまり、2000万円×0.2=400万円が評価額となるわけです。
また、賃貸アパートやマンションとして建っているものに関しては、人に貸しているため自由に処分できない建物であると判断され、評価額の30%が控除されます。
つまり、通常の評価額の70%で相続金額の計算がされるのです。

遺産は不動産で相続したほうが得なのか?

現金をそのまま相続する場合と、不動産として相続をする場合とでは、控除の内容が変わり、相続税にも差が生じます。
具体的な例として、2000万円を現金で相続する場合と、不動産にして相続する場合とでは、どれくらい違うのか見てみましょう。

現金で2000万円を相続した場合は、2000万円に対してそのまま相続税が計算されます。
2000万円で土地を購入してから相続をした場合は、評価額が80%となるので、実質は1600万円に対して相続税が計算されます。
その差額が400万円になるので、自ずと相続税の支払い金額も変わってきます。

このように、相続税の支払いという点において、現金で相続するよりも、不動産として相続したほうが、税金の支払いを少なくすることができるのです。