平成27年度の相続税改正によって、今までは税金を払う必要のなかった人も一部課税になる可能性が出てきました。改正された相続税は実際にはどんな仕組みで、どんな人が課税されるのか、または減税されるのか等、4つのポイントをわかりやすく解説します。

1・「基礎控除額の引き下げ」で課税対象となる人が増加!

「基礎控除額の引き下げ」で一般的な家庭も課税対象に

2014年度までは実際に相続税を課されていた相続人は4%程度でしたので、実は大部分の方は相続税を課税されていませんでした。平成27年度の相続税改正の目的は課税対象を6%〜と増やして税収入を多くすることです。全体の6%くらいでは、まだ自分には関係のない話、と安心してはいけません。

遺産にかかる「基礎控除額の引き下げ」によって、都市部などでは、特に大きな豪邸を持っていなくても普段生活している自宅を所有していただけで、相続税を課せられる可能性がでてきたということですから、必ずチェックしておきたいポイントです。

そもそも「基礎控除額」って何?

遺産が僅かしかないのに相続税がかかってしまっては、煩雑な相続の手続きの負担が更に増えてしまいます。こうしたことを避けるために、遺産にかかる「基礎控除額」というものがあります。所得税などにも「基礎控除額」がありますが、考え方は同じです。「基礎控除額」を超えない限りは課税されないということです。

改正前の基礎控除額と改正後の基礎控除額の計算の仕方は簡単

改正前:5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)=基礎控除額
改正後:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

法定相続人には相続の放棄をした人や養子(実子がある場合には1人・実子のない場合には2人まで)を含みます。

法定相続人が、配偶者と子供2人の場合の基礎控除額で比較すると

改正前:5,000万円+(1,000万円×3人)=8,000万円(遺産に関わる基礎控除額)
改正後:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円(遺産に関わる基礎控除額)

つまり夫が死亡し、妻と子2人が相続人の場合には、合計で4,800万円以上の相続がある場合には相続税がかかります。
改正前は8,000万円に満たなければ非課税だったので大きな違いですよね。特に都市部などでは土地家屋の評価額が高くなる傾向があるため、この改正によって相続税を支払わなければいけないケースが増えたと言われています。

2・相続税の最高税率アップはお金持ちでないと関係ない?

平成27年度の相続税改正によって最高税率も引き上げになりました。改正前は相続税の最高税率は50%でしたが、各法定相続人の取得金額が6億円超の場合には55%に引き上げ、2億円超3億円以下の場合には改正前40%だったものが改正後は45%となりました。

こちらは遺産分割後の各個人の取得金額ですので、かなり財産が多い場合でない限り関係なさそうです。例えば子供2人が相続人になるケースで法定相続分の2分の1ずつを相続した場合には、遺産が4億円以上ないとこの改正による増税にはなりません。

3・未成年者と障害者の「税額控除額」引き上げ

未成年
こちらは減税に繋がる改正です。未成年者と障害者について、改正前は未成年者:20歳までの1年につき、障害者:85歳までの1年につきそれぞれ6万円(特別障害者12万円)が「税額控除」となっていました。平成27年度の相続税改正によりこの6万円が10万円(特別障害者は20万円)に引き上げられました

未成年者や障害者の支払う税金を安くする為に相続税の額から一定の額を差し引くことができるのが「税額控除」制度ですが、その差し引ける額が改正で増えたことによって、減税になるというわけです。

例えば15歳の相続人の場合には20歳-15歳で5年分、5年×10万円で50万円が未成年者控除額として相続税の額から差し引くことができます。
相続税額が50万円に満たない場合、例えば30万円だった場合には、残りの20万円を未成年者の扶養義務者の相続税から差し引くことができます。障害者の場合でも同じです。

4・「小規模住宅地等の特例の改正」で今まで住んでいた家にそのまま住める?

これも、減税に繋がる改正です。「小規模住宅地等の特例」は、今まで被相続人と相続人が一緒に住んでいたり、事業を営んでいたりした土地や家屋を売却しないですむようにすることを目的としています。一定の面積を上限として、その宅地の評価額を最大で80%も減額できますので、所有者には嬉しい特例です。

「小規模住宅地等の特例」の改正では、上限としていた一定の面積が以下のように拡大され、更に評価額を抑えることができるケースが増えました。
居住用の宅地などの限度面積:改正前240㎡ 改正後330㎡
居住用・事業用の宅地の併用の限度面積:改正前400㎡ 改正後730㎡

2世帯住宅も特例の範囲に

建物が世帯ごと別々の所有財産として登記されていないなどの一定の要件を満たす場合には、構造上区分された2世帯住宅も「小規模住宅地等の特例」の範囲になるように改正されました。

老人ホームで死亡した場合にも特例の範囲に

死亡の直前に老人ホームなどに入所していた場合にも一定の要件を満たす場合には「小規模住宅地等の特例」の範囲になるように改正されました。

平成27年の相続税改正のポイントがおさえられましたか?基礎控除額は変更できませんが、各種特例の適用を受けられるかをしっかり確認した上で相続に備えましょう。