就活ならぬ「終活」。人生の最後を自分らしく迎えるために、また死後に家族ができるだけストレスを感じないように、前もって準備する人が増えています。
ここでは、終活をすることにどんなメリットがあるのかを、実際に活動をした人たちの口コミから、3つの視点に分けてご紹介していきます。
遺言書を残しておけば、本人も家族も安心
遺言書を残すことも、終活のひとつと考えられます。遺産相続においてよくあるのが、財産分与に関して相続人同士が揉めてしまうことです。
親兄弟が別々に暮らしている状態では、家族同士の関係も希薄になりやすいため、スムーズに相続の話が進まないのも理解できます。このようにコミュニケーションが取りにくい状況では、遺言書の存在がトラブル防止ツールとして機能してくれるのです。
財産分与で家族を困らせたくない〜70代男性の場合
ある70代男性の口コミですが、遺言書の作成は亡くなった友人のご家族からの勧めだったようです。
その友人も同年代で、血圧は多少高めでしたが食欲もあり、元気に生活しているように見えました。しかし、運動の最中に倒れると、そのまま亡くなってしまったのです。突然の死に対してご家族も困惑し、整理されていない遺産の分与に大変苦労されたと言います。
その友人の子供たちはそれぞれ遠くで暮らしていたため、相続の手続きにも多くの時間を費やさなければなりませんでした。
そこで、この70代の男性は、自分の財産にどのようなものがあるのかを家族がすぐわかるように、遺言書に書いたところ安心できたとのことです。
子供たちと相談しながら遺言書を作成〜80代女性の場合
ある80代の女性は、旦那さんが亡くなってから自宅でひとり暮らしをしています。3人いる子供さんとは離れて暮らしているので、1年に1度くらいしか顔を合わせません。
以前、友人の女性から遺言書を書いていることを告げられたとき、自分に突然のことがあってもいいようにと、書き方を教えてもらい作成したそうです。
その際、あらかじめ子供たちに遺言書を書いていることを伝えたそうです。遺産について子供たちと話し合えたことで、遺言書をスムーズに作成することができたといいます。
その遺言書は、親子だけがわかる他人には見つけにくい場所に保管されているそうです。
自分にしかわからない財産は自分で整理しておく
遺産の中には、本人でなければ処理方法や価値がわからないものもあります。このような場合、被相続人が亡くなってしまうと、残された家族だけで遺産を整理することは極めて困難です。生活にも大きな負担となりかねません。
生前に自分の財産を整理しておく。これもまた終活と言えます。
子供たちが困らないように土地を売却〜70代男性の場合
ある70代男性は、元々は農家の出身で、現在では使っていない農地をいくつか所有しています。こうした農地の場合、代々名義変更がなされていないケースも多いのですが、この男性の家系ではしっかりと名義変更をして土地を受け継いできました。
しかし、それらの農地も今は休耕地になり、将来的に名義変更を行ったところで、その土地をどう使えばよいのかが長年の課題となっていました。
そのため、この70代男性は、自分が亡くなった後に子供たちが処分に困らないように、土地を他の農業者に譲る手配をしました。早くから準備を進めたことで、生前に土地の売却ができ、流動財産として資金が残せたことを満足しているそうです。
趣味のアンティーク品を自分で売却〜70代女性の場合
ある70代女性は、昔からアンティークの趣味があり、部屋には価値の高い骨董品が所狭しと並べられていました。しかし、子供たちが独立し孫もできた頃から、このまま収集し続けるのは非現実的であると考えるようになったそうです。
終活についてのセミナーに参加したところ、知識のある自分が生きているうちにアンティークを売却すれば、いくらかでも遺産として残すことができると考えるようになったそうです。
子供たちにはアンティークの知識がないため、高値での売却は難しいと感じたことがきっかけでしたが、改めて趣味のアンティーク品と向き合う時間ができて楽しかったとのこと。そして、70代に入ってからはアンティーク以外の遺産整理もスムーズに進められているとのことです。
趣味のものは自分の責任で断捨離!
遺産の中には、残されても困ってしまう物も含まれています。それらを自分が亡くなることで家族に押しつけてしまうのは忍びないものです。また、「できるだけ身軽な状態で去って行きたい」と考える人も少なくありません。
生前の断捨離。これも終活のひとつの形と言えます。
大量の本を売却や寄付で断捨離〜60代男性の場合
ある60代男性は、持ち家以外に遺産はないと思っていました。しかし、長年の趣味である読書により、蔵書は書斎に入りきれないほどの量を有していました。
ところが、退職してから家にいる時間が多くなると、本の処分について考えるようになったと言います。自分が亡くなった時に、家族が大量の本の処分に困るだろうと思い、複数年をかけて売却、または学校などに寄付をするようになりました。
「趣味の読書は図書館を利用すればいい」と、外出する機会も増えたおかげで、この男性は以前より健康的に生活になったと喜んでいます。
長年作りつづけた洋服を断捨離〜70代女性の場合
ある70代女性は洋裁が趣味で、かなりの数の洋服や生地などを所有していました。最初は自分で着る服だけを作っていましたが、そのうち着ることがなくても作るようになり、その数は増えつづけました。将来、自分が亡くなれば家族が処分に困ることは目に見えていたので、思い切って処分することにしたそうです。
家族や友人で欲しい人には差し上げ、状態のいいものはリサイクル・ショップへ持ち込むか、廃棄を進めてきました。今ではその数も減って大分すっきりしたそうです。
「無駄なものを残して、家族に恨まれたくないですからね」と、気持ちもすっきりした様子とのことでした。
終活が相続をスムーズにし、家族の負担を緩和してくれる
現代においては、家族がそれぞれ別々に暮らしていることも多く、高齢者の一人暮らしも少なくありません。その場合、子供が高齢者である親の状態を日常的に把握できていないことも多いようです。
そうした状況で高齢者が亡くなると、相続の問題が発生するわけですが、生前の付き合いが希薄だとトラブルが発生しやすくなるでしょう。特に親族の数が多ければ事情も複雑になります。親族間で相続処理の押しつけ合いが始まる可能性が高まり、人間関係が悪化するケースもよくあるのです。
こうした事態を防ぐのに、終活は有効な手段だと言えます。被相続人が亡くなる前に、家族で一緒になって進めていくのが望ましいでしょう。そうすることが、本人だけでなく、残された家族の負担を緩和することにもつながるのです。まずは、日常的なコミュニケーションを心がけてみてください。